Please ensure Javascript is enabled for purposes of website accessibility CEOセッション:債券運用におけるインフレとボラティリティへの対応- ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズ - アジア・日本機関投資家
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CEOセッション:債券運用におけるインフレとボラティリティへの対応

2026年4月にシンガポールで開催されたジャナス・ヘンダーソン・アジア・インベストメント・サミットにおいて、Ali DibadjがGreg WilenskyおよびDenis Strucと対談し、債券運用におけるクレジットの質、持続的なインカム、デュレーションのポジショニング、そしてCLOをはじめとする証券化商品への理解を深めることの重要性について議論しました。

2026年6月10日
9 分で読めます

主なポイント:

  • 投資家の間では、2022年に見られたように、エネルギーコストの上昇がインフレに及ぼす影響への懸念が高まっています。しかし、2026年の米国労働市場の底堅さと、実質利回り・名目利回りが相対的に高い水準にあることが、一定の安心材料となっています。
  • 地政学リスク、根強いインフレ、金利の高止まりは不確実性を高める要因ですが、同時に市場全体のリターン格差の拡大にもつながっています。こうした環境下では、信用力の見極めと銘柄選択が、リスクを乗り越え相対的な価値を捉える上での鍵となります。
  • CLOをはじめとする変動金利型の証券化商品は、デュレーションリスクを管理しつつインカムを高める有効な手段です。また、市場のタイミングを計ろうとするよりも、投資を継続する方が、長期的には優れたアプローチとなる可能性が高いと考えます。

Ali Dibadj : 皆さん、こんにちは。Ali Dibadjです。今日はアジア・インベストメント・サミットの会場から、ジャナス・ヘンダーソン債券運用チームのGreg WilenskyとDenis Strucとともにお届けします。Gregは米国債券部門ヘッド、Denisは証券化商品チームのポートフォリオ・マネージャーを務めています。二人はちょうど降壇したところですが、聴衆の皆様にどのような話をしましたか。

Greg Wilensky : 今最も重要なポイントは、エネルギー価格の上昇に対する懸念がある中で、多くの投資家が2022年の記憶に引きずられているという点です。2022年にはエネルギー価格の上昇と同時に、債券が株式と並んで大幅に下落するという厳しい局面がありました。しかし、今年は出発点がまったく異なります。足元では若干の短期的な弱さが見られるものの、環境は2022年とは大きく異なっています。労働市場は当時の非常に逼迫した状況と比べ、はるかに需給の均衡が取れている状態にあります。また、利回りの水準も、実質利回り・名目利回りともに2022年とは大きく異なっています。したがって、2022年の債券と株式同時下落の再来を懸念する必要はないと考えています。

Ali Dibadj : Denis、あなたはどのような話をしましたか。

Denis Struc : 非常に興味深いテーマです。Gregの指摘に関連して申し上げると、私たちが債券投資家の皆様にお伝えしているのは、不確実性が引き続き高い水準にとどまることを認識した上で、ポートフォリオにおけるパフォーマンスの源泉について規律ある姿勢を維持すべきだということです。パフォーマンスにおいて非常に重要な要素がインカムの水準であり、このインカムこそがボラティリティに対する緩衝材となっていることを認識する必要があります。どの資産クラスが何をもたらすのか、どの程度のインカムが得られるのかを的確に見極め、それらの収益源を年間を通じて安定的に維持することが重要です。

Ali Dibadj : 少し視点を広げましょう。二人ともボラティリティと世界の変化に言及しました。ジャナス・ヘンダーソンでは3つの主要テーマについて議論しています。聴衆の皆様もよくお聞きになっているテーマです。1つ目は地政学的な秩序の再編、2つ目はライフスタイルや人口動態の変化、そして3つ目は資本コストの上昇、言い換えれば利回りの上昇です。お客様のポートフォリオを運用する上で、これら3つのテーマをどのように捉えていますか。

Greg Wilensky : これらは日々の投資判断において実際に考慮している重要な要素です。そして、ご指摘のとおり、不確実性とボラティリティを増幅させる要因でもあります。こうした環境はトップダウンのマクロ戦略を実行する機会を生み出しますが、一方で、これらのテーマがどのように展開するかを正確に予測し、その判断で一貫して成果を上げることは依然として難しいという現実も認識すべきです。したがって、こうしたテーマをポートフォリオに反映させつつも、戦略全体のリスクバジェットを圧迫しないよう注意しています。リスクバジェットの大部分は、引き続きボトムアップのセクター選択や銘柄選択に充てたいと考えています。ただし、これらのテーマはリターンとリスクの偏りを生み出す要因でもあり、ポジティブな側面もあります。つまり、アクティブ運用者として、お客様に付加価値を提供する可能性が高まると考えています。

Ali Dibadj : Denis、いかがですか。

Denis Struc :重要なのは、この地政学的な枠組みの変化がどのような影響をもたらすかを分解して理解することです。市場を取り巻く環境は変化しています。地政学リスクがインフレ水準に影響を及ぼしており、インフレの低下が世界的な金利低下につながるという大きなテーマは、少なくとも短期的には必ずしも当てはまりません。だからこそ、このテーマは証券化商品にとって非常に有利に作用しています。2022年以降、この環境下で証券化商品は優れたパフォーマンスを発揮してきました。その理由は、証券化商品の多くが変動金利商品であるためです。ポートフォリオにどの程度のデュレーションを持つべきか、今後の金利水準はどうなるか、インフレはどう推移するか—こうした予測に不確実性がある場合、最善の方法は変動金利資産を一定程度組み入れ、高水準のインカムを確保することです。金利が上昇すれば、変動金利資産のインカム水準も上昇するからです。これはまさに2022年から2025年にかけて、幅広い債券への配分において非常にうまく機能してきたテーマです。このテーマは終息に向かうと思われていましたが、地政学リスクの高まりにより、むしろ再び強化されています。   

Denis Struc :重要なのは、この地政学的な枠組みの変化がどのような影響をもたらすかを分解して理解することです。市場を取り巻く環境は変化しています。地政学リスクがインフレ水準に影響を及ぼしており、インフレの低下が世界的な金利低下につながるという大きなテーマは、少なくとも短期的には必ずしも当てはまりません。だからこそ、このテーマは証券化商品にとって非常に有利に作用しています。2022年以降、この環境下で証券化商品は優れたパフォーマンスを発揮してきました。その理由は、証券化商品の多くが変動金利商品であるためです。ポートフォリオにどの程度のデュレーションを持つべきか、今後の金利水準はどうなるか、インフレはどう推移するか—こうした予測に不確実性がある場合、最善の方法は変動金利資産を一定程度組み入れ、高水準のインカムを確保することです。金利が上昇すれば、変動金利資産のインカム水準も上昇するからです。これはまさに2022年から2025年にかけて、幅広い債券への配分において非常にうまく機能してきたテーマです。このテーマは終息に向かうと思われていましたが、地政学リスクの高まりにより、むしろ再び強化されています。   

Ali Dibadj : Denis、あなたはステージでCLO(ローン担保証券)と証券化商品について話していましたが、CLOや証券化商品について参加者の間ではまだ十分に理解されていない部分があるように感じました。この資産クラスに関するよくある誤解について教えてもらえますか。

Denis Struc : 最もよく聞く2つの誤解があります。1つ目は、「CLOは2008年に世界の金融システムを崩壊させた資産クラスだ」というもの。2つ目は、「CLOが他の債券資産クラスより割安なのは、単に流動性がないからだ」というものです。この2つが最大の誤解であり、私たちはお客様にその実態を丁寧にご説明しています。非常にシンプルに申し上げると、CLOにおけるデフォルトがゼロであるということは、決して偶然ではありません。

Ali Dibadj : CLOのデフォルトがゼロ、ですか。

Denis Struc : はい、驚くべきことに聞こえるかもしれませんが、2026年3月末時点において、CLOのシニア債投資家は、過去30年間 1 ドルたりともCLOのデフォルトによる損失を被ったことはありません。(出所:S&P Global Ratings)私たちはこのメッセージを繰り返しお伝えしています。実際、最も厳格なデフォルトの定義を適用しても、インカムの分配が途絶えたことは一度もないのです。このような実績は、債券市場全体を見渡しても極めて稀です。こうした実態の理解を促進する上で、ETF(上場投資信託)のような商品の登場が大きな役割を果たしています。ETFでは隠し立てができません。ポートフォリオの保有銘柄も、流動性も、流動性コストもすべて可視化されます。ETF市場の規模は市場全体と比べればまだ大きくありませんが、米国ではCLO ETFが大幅に成長しており、これによりお客様は流動性の実態を明確に確認できるようになりました。そしてこれが、CLOの訴求力を広げることに確実に貢献しています。    

Ali Dibadj : ジャナス・ヘンダーソンはアクティブ運用会社です。ファンダメンタルズに基づくボトムアップの徹底したリサーチを行い、投資対象の個別証券や各種資産プールを精査しています。現在の環境下で、最も確信度の高い投資分野はどこですか。

Greg Wilensky : 2つ挙げさせてください。1つ目は、より戦術的で足元の動きに関連するものです。イラン情勢やエネルギー価格の上昇を受けて金利が上昇しましたが、その金利変動をインフレ期待と実質利回りの変化に分解して分析したところ、上昇の相当部分が実質利回りの上昇によるものであったことに驚きました。これは論理的には矛盾しており、直感に反するものです。なぜなら、エネルギー価格の上昇は、特にこの水準が継続すれば、経済成長にマイナスの影響を及ぼすからです。ジャナス・ヘンダーソンはかなりの期間、デュレーションをアンダーウェイトとしてきましたが、この金利上昇局面は、ポートフォリオにデュレーションを追加する好機だと考えています。特にイールドカーブの短期から中期の部分に注目しています。金利がその後反転した際にリターンを獲得できると同時に、2022年とは異なり、今後仮に経済状況が悪化した場合でも債券がしっかりとパフォーマンスを発揮できるポジションにあるという確信が得られます。なお、経済状況が悪化する可能性を示す理由は複数考えられますが、現時点では、ジャナス・ヘンダーソンは経済状況が悪化することは想定していません。2つ目は、やや長期的な視点ですが、Denisが的確に説明しているCLOの議論に加えて、社債と比較して証券化クレジットの中でクレジットの質を引き上げることにより、ポートフォリオに高品質なインカムを加える機会が広がっていると見ています。これにより、超過収益のボラティリティを過度に高めることなく、インカムを確保することが可能です。

Ali Dibadj : Denis、あなたはどのように考えていますか。

Denis Struc : クレジットの質を引き上げるというテーマに関連して申し上げると、ファンダメンタルズの観点からボトムアップで適切な質を維持することが重要です。CLOを例に挙げると、欧州では70社以上、米国では150社以上の運用会社がCLOを運用しています。近年は、ソフトウェア分野のファンダメンタルズの変化や、エネルギー関連コストが景気循環セクターに及ぼす影響などを考慮しながら、これらの業界向けローンに対する一層の精査が求められています。ここで私が申し上げたいのは、現在最も重要な点は、適切な投資先を選び、確立された投資哲学を持ち、リスクを十分に理解し説明できる運用会社を選定することです。運用会社が市場見通しを持つこと自体は当然ですが、それをポートフォリオにどう落とし込むか、明確な運用プロセスが求められます。ボラティリティの高い環境下でも、個別銘柄固有のリスクを抑制できる運用会社の選定が重要と考えます。なぜなら、個別銘柄固有のリスクを抑制することで、シニア債投資家にとっては市場のボラティリティの影響が軽減されるからです。これはファンダメンタルズ・リスクの影響をより受けるジュニア債投資家にとってはなおさら重要です。クレジットの質を落とすことなく、ボラティリティの高い局面を乗り切ることで、市場をアウトパフォームできると考えています。

アクティブ運用:ファンドマネージャーが調査・分析や投資判断を通じて、特定の指数やベンチマークを上回る成果を目指す運用手法です。パッシブ運用(指数連動型運用)とは対照的な考え方です。

非対称リターン:従来の投資では、利益の可能性と損失の可能性が概ね均衡するリスク・リターン特性を示すことが一般的です。一方、非対称リターンとは、損失の可能性に対して利益の可能性が相対的に大きい投資成果を指します。つまり、非対称リターン投資は、想定リスクに対して期待リターンが大きい局面を捉えることを目的とします。

バランス型運用:複数の資産クラスを組み合わせることで、リスクとリターンのバランスを図る投資戦略です。一般的には株式と債券に分散投資し、均等または株式60%・債券40%のような配分で構成されます。

ボトムアップ:マクロ経済や市場全体ではなく個別銘柄の分析に基づき、産業・国・地域の中から有望な投資機会を見出す手法であり、トップダウン運用とは対照的な考え方です。

信用力(信用の質):債券(政府や企業が発行)が、元本や利息を期日どおりに支払う能力が高いほど信用力は高いとされ、債務不履行(デフォルト)のリスクが低いほど信用格付機関の格付にも反映されます。

景気敏感株:自動車などの裁量的消費財を扱う企業や、鉱業のように景気変動の影響を受けやすい産業を指します。

デフォルト/債務不履行:債務者(債券発行体など)が利息の支払いや元本の返済を期日どおりに履行できない状態を指します。

デュレーション:債券のキャッシュフローによって投資額を回収するまでの平均期間(年数)を示す指標です。また、債券や債券ポートフォリオの価格が金利変動にどの程度敏感かを測る指標としても用いられます。一般に、デュレーションが長いほど金利変動に対する価格の感応度は高く、逆に短いほど低くなります。

変動利付証券:利払いが固定されておらず、無担保コール翌日物金利などの基準金利やインフレ率に連動して変動する債券です。

固有リスク:特定の企業固有の要因に起因するリスクであり、市場全体の動きとの相関が低い、またはほとんどないものを指します。

流動性:資産が市場でどれだけ容易に売買できるかを示す指標です。一般に、市場で大きな価格変動を引き起こさずに大量に売買できる資産は、流動性が高いとされます。

名目利回りと実質利回り:名目利回りとは、債券のクーポン、すなわち発行体が投資家に支払う利息に基づく利回りです。実質利回りとは、名目利回りからインフレ率を差し引いたものです。

リスクバジェット:投資では、より高いリターンを得るために、一定のリスクを引き受けることになります。リスクバジェットとは、その許容リスクを定義し、複数の投資対象に対して効率的に配分するためのリスク管理手法です。

証券化資産:ローンなどの資産をまとめて証券化し、利息を生む金融商品として市場で売買できるようにしたものです。これらの資産から生じる利息や元本の返済は、証券の保有者に分配されます。

シニア債権者:発行体が財務的に困難な状況に陥った場合、他の債権者よりも優先的に返済を受ける権利を持つ債券保有者です。

ローン担保証券(CLO):企業向けローンなどの資産をまとめて裏付けとし、証券化した金融商品です。債務担保証券(CDO)はCLOと類似していますが、特定資産への集中や複雑なデリバティブの活用により、リスク要因が見えにくく、一般によりリスクが高いと見なされる傾向があります。

ボラティリティ:ポートフォリオ、個別資産、または指数の価格が上下に変動する度合いを示す指標です。価格の変動幅が大きい場合は、ボラティリティが高い状態を指します。一方で、価格の変動が小さく緩やかな場合は、ボラティリティは低いとされます。一般に、ボラティリティが高いほど投資のリスクも高くなると考えられます。

利回り:有価証券から一定期間に得られる収益の水準を示す指標で、通常は年率で表されます。株式では配当利回りが一般的に用いられ、1株当たりの配当額を株価で割って算出されます。債券では、最も基本的にはクーポン(利息)を現在の債券価格で割ることで求められます。

イールドカーブ:同程度の信用力を持つ債券について、利回りと満期の関係を示したグラフであり、投資家の景気見通しを示す指標として広く用いられます。通常の環境では右上がりの形状となり、満期の短い債券の利回りは、満期の長い債券より低くなります。また、将来の金利動向に関する投資家の見方によって、その形状は大きく変化することがあります。