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2026年 J.P.モルガン・ヘルスケア・カンファレンスの主なポイント

 

2026年2月10日
10 分で読めます

主要ポイント:

  • ヘルスケア・セクターは、政策面の懸念が後退し、規制環境が安定していることに加え、2025年後半にかけてセクター全体で株価が堅調に推移したことを背景に、良好な地合いの中で2026年のJ.P.モルガン(JPM)・ヘルスケア・カンファレンスを迎えました。
  • JPMウィーク期間中に大型案件の発表は見られなかったものの、M&Aは引き続き重要なテーマであり、バイオ医薬品および医療機器分野全体で持続的な戦略的関心が示されました。これは、高品質な成長資産の希少価値を改めて浮き彫りにしています。
  • 政策面やマクロ環境に起因する混乱が数年続いた後、JPM26では事業環境の正常化が進んでいることがうかがえました。企業は再びイノベーション、開発パイプライン、実行力に注力しており、こうした動きは、2026年に向けた投資機会についての私たちの前向きな見方を裏付けるものです。

ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズのヘルスケア戦略運用チームは25年以上にわたり、J.P.モルガン(JPM)・ヘルスケア・カンファレンスに参加してきました。同カンファレンスは毎年1月に開催される世界最大級の投資家向けヘルスケア・シンポジウムで、その年のセクターの方向性を示す重要なイベントです。運用チームは企業プレゼンテーションに参加したり、約300名にのぼる経営陣や業界リーダーとのミーティングを行いました。カンファレンス参加を通じて得られた主なポイントと考察をご紹介します。

全体的な見通し

改善する投資家心理と、好転するセクターの事業環境

Andy Acker / Dan Lyons

カンファレンス開催中、サンフランシスコは今年も晴天に恵まれ、一昨年までの雨模様とは対照的な、歓迎すべき幕開けとなりました。今回は、素晴らしい天候に加え、会場全体のムードも明らかに前向きなものとなりました。前年のカンファレンスはヘルスケア株式市場の急落直後に開催されましたが、2025年後半にかけて、バイオテクノロジー銘柄を中心にヘルスケア株式市場は上昇が続き、2025年年初の低迷から回復しました。2025年第4四半期には、ヘルスケア株式市場が他のすべてのセクターをアウトパフォームしました。

ヘルスケア株式市場のパフォーマンス好転の背景には、次のような複数の要因があります。まず、2025年後半に薬価引き下げを巡る不透明感が緩和し、影響の大きい医薬品関税を回避する道筋が見え始めたことです。次に、2025年に申請された米食品医薬品局(FDA)による承認プロセスの大半が期限内に審査されたことや、承認プロセスを加速させる新たなプログラムの導入など、FDAが米国のバイオ医薬品産業を支援する姿勢を示したことです。これらに加え、金利低下が追い風となり、M&A(合併・買収)が再び活発化し、より良好な事業環境が整いつつあることがヘルスケア株式市場のプラス材料となっています。

政治面の逆風が後退し、M&Aとイノベーションが中心テーマに

2025年末にかけてM&Aが活発化したことを踏まえると、今年のカンファレンスにおいて大型のバイオ医薬品関連のM&A案件の発表が目立って少なかった点は、一部で注目を集めました。しかしこれは、来年以降の動きを示しているというよりも、タイミングの問題と捉えています。2025年末に大規模なM&Aが相次いで実施された結果、年初には相対的に案件が少なくなっていたと考えられます。運用チームは、2026年はセクター全体で引き続き、戦略的M&Aが活発になると見込んでおり、この見方は、戦略的買収に対する強い意欲を示した大手製薬企業の経営陣のコメントによっても裏付けられています。また、カンファレンス最終日には、医療機器大手のボストン・サイエンティフィックによる同業ペナンブラへの145億ドルの買収提案が発表され、医療機器分野における高品質な成長資産の希少性と価値が改めて浮き彫りとなりました。

今年のカンファレンスは、ヘルスケア株式市場の「通常の状態」への回帰を感じさせるものだったとも言えます。新型コロナウイルス、インフレ、関税、政策の不透明感といった要因による数年にわたる混乱を経て、事業環境の改善とともに、焦点は再びイノベーションへと明確に移っています。企業は製品パイプラインに関する新情報や事前発表を継続的に行い、マクロ環境の逆風よりも、臨床開発の進展、今後のデータ発表、製品上市の実行力に、より多くの関心が向けられていました。米食品医薬品局(FDA)におけるリーダーシップの変更については引き続き注視が必要であるものの、規制環境は当初懸念されていたほど不安定ではなく、複数のバイオテクノロジー企業が、重要な臨床試験の計画や承認プロセスにおいてFDAとの連携が強化されている点を強調しました。

このように会議開催前からセンチメントが改善していたことに加え、運用チームの各メンバーが行った建設的なミーティングを通じて、再び企業がイノベーションに注力していることが一層明確となりました。こうした点を踏まえ、運用チームは、新たな治療法の可能性や、2026年に向けたヘルスケア株式市場の方向性について、これまで以上に前向きな見通しを持っています。

医薬品セクター

支出意欲の回復と、治療パラダイム転換への兆し

Luyi Guo

2025年年初に市場を覆っていた不透明感が後退し、ヘルスケア企業の経営陣にとって政策面の見通しがより明確となり、業界全体の基盤が安定した中で今年のカンファレンスが開催されました。ヘルスケア・セクターを取り巻く規制等について落とし所が見えてくるのに伴い、大手製薬企業は投資意欲の回復を示しており、再び製品パイプラインや戦略的投資に議論の焦点が戻っています。

注射型肥満治療薬の大きな成功に続き、2026年は「飲む肥満治療薬」が注目されつつあります。流通網や販路の拡大と次の成長段階を目指し、複数の企業が次世代型の飲む肥満治療薬の開発を進めています。肥満治療だけでなく様々な疾病分野で、今後数年にわたり、イノベーションが治療の在り方を大きく変える可能性があると見ています。

免疫分野では、ジョンソン・エンド・ジョンソンおよびアッヴィによる炎症性腸疾患(IBD)の併用療法に関する第二相臨床試験のデータが年内に公表される見込みであり、次世代治療薬を開発する企業にとって重要な示唆をもたらす可能性があります。がん領域では、長年標準とされてきた「免疫チェックポイント阻害剤+化学療法」を超える新たな治療法に関する重要なデータが期待されており、アストラゼネカ、メルクなどのがん治療を牽引する企業に影響を与えると考えられます。また、神経科学分野が次の新しい開発領域として台頭しており、2027年に向けて、アルツハイマー病の予防、アルツハイマー病関連精神病、うつ病を対象とした新しい治療法が、注目テーマとなっています。

ヘルスケア株式市場への投資においては、成熟した製品パイプライン成功確率の高い臨床試験データによって、今後の収益が予測しやすい企業に注目することが重要だと考えます。短期的な株価の上昇要因については、期待値の慎重な見極めが必要ですが、2026年における医薬品セクター全体の投資環境は、良好になりつつあります。

バイオテクノロジー・セクター

安定したディール意欲と、2026年に向けた豊富な臨床マイルストーン

Agustin Mohedas

今年はバイオテクノロジー分野のM&Aに関する発表は比較的落ち着いていましたが、当カンファレンスに参加している業界リーダーの姿勢からは、2025年末にかけての力強い取引の勢いが鈍化している兆しは感じられませんでした。投資銀行は引き続き活発に活動しており、2025年末にかけての資金調達も堅調でした。また、大手製薬企業の経営陣は、戦略的買収を進めるための資金力と強い意欲の双方を有していることを示しました。カンファレンスでは、メルクのCEOが「数百億ドル規模」の取引にも前向きである姿勢を改めて示したほか、ブリストル・マイヤーズ スクイブのCEOは「幅広く機会を探る」と述べ、ビジネスの進展が引き続き最優先事項であることを強調しました。


2026年 J.P.モルガン・ヘルスケア・カンファレンスにて、STAT News主催のパネルディスカッションに登壇するAgustin Mohedas    写真:Sarah Gonzalez

今回のカンファレンスで特に印象的だったのは、経営陣との対話の質の高さでした。多くの企業で財務基盤が強化されており、多くの製品パイプラインが開発の最終段階に向かうと見込まれることから、2026年は株価上昇に繋がる材料に富んだ1年になると期待されます。規制面では、2025年におけるFDAの承認件数は概ね過去の平均と一致しており、業界全体の事業計画策定を支えています。一部の審査期限が延長されている点については、現時点で大きな悪影響は見られないものの、引き続き注視していく必要があります。

中枢神経系疾患の分野では、運動機能障害の治療に関する後期臨床試験データを含め、複数の臨床試験が進展しており、てんかんや気分障害といった他の適応症においても、承認申請の段階に入る動きが見られます。さらに、次世代の経口免疫疾患治療の臨床試験計画においても顕著な進展が見られ、乾癬や炎症性腸疾患の新薬の臨床試験が進展しつつあります。これらは、将来的に複数の大規模な市場を生み出す可能性が期待できる分野です。

希少疾患および呼吸器疾患の開発も重要な注目領域であり、肺高血圧症、特発性肺線維症、トランスサイレチン型アミロイドーシスに関する主要な臨床試験で、今後重要な進捗があると期待されています。ワクチンおよび感染症分野のプラットフォームも前進しており、特に成人および小児を対象とした、より幅広い型の肺炎球菌をカバーを目指すワクチンの開発では、2026年にデータの蓄積が進む見通しです。

これらを総合すると、進行中の有望な臨床試験、良好な資金調達環境、そして大手製薬企業による戦略的M&Aの継続に鑑みて、2026年のバイオテクノロジー・セクターの見通しは、引き続き良好と考えます。

医療機器、ライフサイエンス用品/機器、医療保険

Tim McCarty

医療機器セクター:イノベーションと人口動態が追い風となり、前向きな見通しを支える

医療機器企業は、業界全体が堅調な基盤を維持する中で、今年のカンファレンスに臨みました。イノベーションは引き続き活発で、多くの製品や市場がライフサイクルの初期段階にあり、大きな成長余地が期待されます。注目すべき点としては、医療保険制度改革法(オバマケア)の取引所補助金が2026年1月から失効することや、低所得者向け医療保険制度(メディケイド)における就労要件などの受給資格の厳格化が挙げられます。ただし、米大統領選の中間選挙を控え、有権者にとって医療の重要性が高いことを踏まえると、こうした影響は一定程度抑制される可能性もあります。

カンファレンス開催中に公表された外部機関のデータでは、2025年末にかけて医療機器の利用がやや減速したことが示され、事業環境の強さに疑問が生じる場面もありました。しかし、その後に発表された大手医療機器企業の決算では、利用件数が底堅く推移していることが示され、基礎的な需要に対する懸念は和らぎました。私たちは、人口動態が利用件数の増加を中長期的に後押しすると考えています。2025年に米国のベビーブーマー世代は75歳以上の後期高齢者となりましたが、一般的に75歳以上の後期高齢者は、65歳と比べて医療消費が通常2倍に増加すると言われていることから、75歳に到達するベビーブーマー世代の増加は、複数年にわたり、医療機器の利用増加を後押しすると見ています。

全体として医療機器セクターの事業環境は引き続き良好であり、とりわけバリュエーションが過去平均を下回る水準にある中、銘柄選別を通じて投資機会を見出す余地が十分にあると考えています。

ライフサイエンス用品/機器・セクター:最終市場の改善とバリュエーションの正常化が、バランスの取れた見方を後押し

ライフサイエンス用品/機器分野では、過去6カ月間で最終市場の環境が大きく改善しています。バイオ医薬品およびバイオテクノロジー企業のライフサイエンス用品/機器への支出は回復基調にあり、学術機関および政府からの需要も安定しています。加えて、生産拠点の米国内回帰の動きが、追い風となっています。バイオ医薬品の原薬を生産するために必要なバイオプロセッシングでの需要は引き続き好調であり、消耗品の需要が堅調に推移する一方で、ライフサイエンス機器の分野でも回復の兆しが見られ始めています。
しかし、足元で株価が大きく上昇したことを受けて、バリュエーションは上昇しており、このセクター全体への投資にあたっては、より慎重かつバランスの取れたアプローチが求められると考えています。

医療保険セクター: 想定外の料率が利益率回復への道筋を再設定する一方、低迷するバリュエーションが選別的な投資機会を提供

カンファレンス開催前の時点では、医療保険業界の経営陣は、今後1年に対して慎重ながらも前向きな見方を持っており、カンファレンス期間中に行った対話もこの見方を裏付けるものでした。しかし、政府が承認した民間企業版の高齢者向け医療保険および低所得者向け公的医療保険の民間企業への管理委託のいずれにおいても、業界全体の利益率は依然としてマイナス圏にあり、これは稀な状況であり、持続可能ではないと考えています。

こうした環境下、経営陣は、2026年に実施される給付削減に加え、これら保険制度の利用管理を強化することが、利益率を歴史的な低水準から回復させる一助になると述べました。医療保険セクターはこれまで投資家には不人気でしたが、コスト正常化の兆しやセクター全体で低水準にとどまるバリュエーションも相まって、医療保険セクターにとって好ましい材料が一定程度見られます。

しかし、1月26日に2027年における民間企業版の高齢者向け医療保険への政府支払い料率案が発表されたことにより、状況は大きく変化しました。料率はほぼ横ばいで、市場予想を大きく下回る内容となり、医療保険関連の株価の重しとなりました。これが、財政赤字を緩和するために医療分野を「財源」として活用しようとする政権の姿勢を反映したものなのか、それとも2025年の薬価引き下げ協議における大手製薬企業への対応と同様に、交渉の場へ引き出すための初期的な提示なのかは、今後の推移を見極める必要があります。

短期的には、政府支払いの料率が市場の想定を下回る水準となったことで、医療保険会社は余裕がなくなり、セクター全体の利益率の改善を遅らせる要因となります。2027年に向けて、医療保険プランは給付削減、より厳格な利用管理、保険請求の工夫などに、これまで以上に依存せざるを得ない可能性があります。ただし、これらの手段にも限界があるため、2027年には利益率が再び圧迫される可能性があります。

ただし、米国の公的保険を管理運営するCMS(米国メディケア・メディケイド・サービスセンター)の料率は、通常、当初の発表から最終決定までの間に引き上げられる傾向があり、今後、上方修正が行われる可能性も残されています。

医療が米国GDPの18%を占め、医療費の抑制が超党派で支持される中で、政策に起因するリスクは医療保険に限らず、米国の医療エコシステム全体に存在します。その一方で、バリュエーションが低水準にあることや、2026年に向けて大幅に利益率が回復する余地があることを踏まえると、厳しい環境下にある医療保険セクターにおいても、選別的な投資機会は依然として存在すると考えています。

 

重要な情報

分散投資は利益を保証するものではなく、投資損失のリスクを排除するものでもありません。

株式投資には、市場リスクを含むさまざまなリスクが伴います。リターンは、発行体の状況や政治・経済環境の変化に応じて変動します。

ヘルスケア関連産業は、政府規制や償還制度、製品・サービスの承認状況に左右され、価格や供給に影響が生じる可能性があります。また、技術革新の進展や特許の失効も、事業環境に大きな影響を与える要因となります。